ディレクターの必須スキル? 逆提案の可能性、価値ある最善の提案とは何か

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日経のコラムにとてもいい記事があった。これを転載する事はしないですが、書かれていた事に似た感覚を仕事でよく体験するので今回はその事についてちょっと書いてみます。昔、あるお客様から相談を受けた事例を軸にお話していきます。

お客様からの要件

まず、お客様は会員に向けたサービス展開をしたいとの事で、独自で持っているデータを配信したいと相談がありました。

システム的にはいたってシンプル。
完成されたデータをメールで配信できるよう、配信システムの構築。
ユーザーは受け取ったメール、URLからデータを閲覧するという物。
ユーザー毎の個別URL構築システムと、メールアドレス情報として会員データを蓄積しておくだけ。

逆提案の可能性

お客様の目的は、今持っているリソースの有効活用。
データを配信して企業価値を高めようという物です。

上記で定めたシステムの場合、データはユーザーに届きますが、
その背景や前後のフォローアップまではできません。

企業価値を高める?

この要件を適えるのは、このようなシステムでは無いと考えました。
ユーザーは、そのデータを見れる事で満足するのか?
もちろんデータ自体は専門情報で、その会社の専売特許のような物でしたので、非常に価値があります。しかし、データ配信以前は直接訪問や書籍販売などでお客様の元へ届けられていました。

しかし、これはユーザーからすると、「情報の質」は全く変わりません。
もちろんメールから閲覧できるメリットは大きいですが、もしかすると営業の方が独断で個別にメール配信などを行い、お客様との間でそのルートが確保されていたかもしれません(これはまぁただの憶測ですが)

このままでは作っただけのシステムになってしまう、そんな不安がありました。
本当に必要なのは、企業価値を高められるシステムなはずです。

必要なのは質の向上

データを見れる。これは既存のサービス提供でもユーザーの元へと届けられていました。
このデータをWebで見られるようにする、それだけは無いと考え、このような提案をしました。
配信予定データを元にWeb限定の会員サービスを新設、そして元々アナログ運営されていた既存有料会員へのサービス差別化です。
また、公式サイト上からも得られるデータを減らし、公式サイト上のあらゆるページから会員サイトへ誘導させるよう導線確保を行い、更新状況だけを会員へ配信するシステムを提案。
これにより、今まで気軽に配信しづらかった情報を「有料会員限定」とする事で抵抗無く発信できるようになりました。

提供情報の質を向上させる事ができるWebサービスの提案です。

結果、当初システムの何倍もの費用がかかるシステムを構築する事になり、公式サイトとも連携を図った為、Web会員化の促進、そして公式サイトもアクセスアップに繋がり相乗効果を産みました。

お客様とユーザーの反応

アクセスアップや会員の増加と、数字で分かりやすい効果が確認できたのでお客様は満足してらっしゃいました。

実は、Web会員の申し込み数は、当初の見込みを大幅に上回りました。その為、負荷に耐えられずログイン時のエラーも何度か起きてしまう結果となってしまいました。
ユーザーからの反応ですが、やはりシステム的な不具合もところどころ見つかった為、Webサービスに関する問い合わせが増えましたが、その反面、このサービス及び元々お客様が持っていたデータがユーザーにとってとても有益な物なのだと、認識する事もできました。逆に言えばユーザーはそれだけこのWebサービスを待ち望んでいたとも言え、需要を確認できたという事です。

もちろんこれらの提案に至るには、お客様とのコミュニケーションを重ねた結果です。一方的な提案ではなく、ヒアリングを重ねた上で最も効果的であろうと思えるシステムを設計しました。
ここで学びがあったのは、物事の本質は表面とは別にあるという事。
お客様より、当初受けた要件はお客様が考えたプランです。しかし、本当にやりたかったのは更に根底の部分。その企業のサービスそのものの価値、企業価値を高める事、そのものだということです。

BMWの「駆け抜ける喜び」


少し話を変えます。BMWが前に使っていたコンセプト「駆け抜ける喜び Freude am Fahren
このコンセプトは経営層はもちろん、社員全員に浸透させる事を徹底したそうです。

有名な面白い話があるのですが、
新任役員は、ドイツにある、プロでも7分前半程度のサーキットを8分を切るタイムで走行できるようにならなければいけない10日間のレーシング強化合宿を行うそうです。
これは、「駆け抜ける喜び」を共感する為の一環なのでしょう。とてもユニークな研修です。
今も続けられてるのかは知りませんが。
本当に大事な部分というのは、物事の本質。
そこを見抜けるかどうかです。
BMWの例は、経営層から末端の営業まで、全てにこのコンセプトを浸透させる事にとても真剣だという事が感じられます。
なぜ必要かというと、物事の本質は一つの根底にあるという事だと思います。ほとんどの企業は1つや2つ、必ず大事にしている理念があります。そこからサービス展開を拡げ、人に認められて商売が成り立ちます。その大事な部分は、時代に左右される事が少ないはずです。

言われた要件を鵜呑みにするのではなく、そういった本質部分を上手に汲み取り、理解し、それを踏まえお客様へ提案する事が本当に価値あるモノなのではないでしょうか。

どんな事にも本質を見抜けるかどうかで大きく変わるはず。
本質を見抜ける眼がWebディレクターには必要です。